2013年01月08日
太古の海底火山の痕跡を観察(下田市須崎:恵比須島)
下田市須崎にある恵比須島は、島といっても人道橋で渡れる無人の小島である。大きさは、満ち潮時に水没する潮間帯部分を含めても南北200m、東西150mほどである。島中央の頂上付近には「須崎恵比須島指向灯」と、「恵比須神社」(夷子神社)がある。島の周囲には遊歩道が整備されており、360°海を望められる。また、干潮時には磯遊びに適した場所である。この島の遊歩道および海岸沿いでは連続的な露頭(地層の露出)が見られ地層の観察には持ってこいである。
今回、散歩がてら恵比須島に行ってきた。この時期、気候も懐も寒く、磯遊びという時期でもないので、地層を観察してみた。
↑①
↑② 50mほどの橋を渡ると、島に渡れる。すると真正面にジオパークの看板が立っている。
この看板の説明によると、ここでは2種類の地層が存在する。
・白~灰色の縞模様の美しい砂の層(本ブログのA層、C層、D層の一部)
⇒火山から噴出した軽石や火山灰が海底に降り積もったり、海流に運ばれたりして出来た。
・角張った岩を多く含む地層(本ブログのB層、D層の一部)
⇒海底を流れた土石流。
本ブログ上では勝手ながら便宜上、下位(古い時代)からA~D層の4つに区分した。
A層…ラミナ(縞模様)の発達する凝灰質砂岩および凝灰岩。
B層…安山岩質の火山岩塊を主体とする火山角礫岩。
C層…ラミナ(縞模様)の発達する凝灰質砂岩。層相はA層に似るがより砂質で淘汰が良く、火山礫はほとんど含まない。火山灰の挟みはほとんど見られない。
D層…火山礫凝灰岩と凝灰質の砂岩・シルト岩の互層。
↑③ 島から西方を眺めると遠くに石廊崎~田牛~吉佐美が見える。この眺めはどこかで見た気がする。
↑④ 島の南側には、千畳敷と称される波食台(潮間帯の平坦面)が見られる。(A層)
↑⑤ 千畳敷の平坦面を形成する地層(A層)は火山灰や軽石質の砂礫(砂質凝灰岩)で、火山岩片(数ミリ~2cm以下)は少量含む程度。上部境界近くには細粒の火山灰のラミナが発達。この上位に巨礫主体とする火山角礫岩(B層)が重なる。
↑⑥ 千畳敷の凝灰岩(A層)は、いわゆる石材の伊豆石としての切出しに適した層相で、切出した痕跡が随所に見られる。島内で分布する面積こそ広いが、層厚では4~5m程である。
↑⑦ 若山牧水の歌碑周辺に分布する巨礫主体とする火山角礫岩(B層)は、海底土石流によって堆積したとされる。
↑⑧ B層の礫には水冷破砕が見られる。近接する礫でもある程度のエリアでクラックの方向性が一致する。また、礫間を埋めるマトリクスは少なく、かつ礫と同質の急冷されたガラス質のものであるので。高温の溶岩が海水と接触し急冷されすぐに固結した水冷破砕溶岩に近い感じ?噴出後の流下距離は短いと思う。
↑⑨ 恵比須島西岸側を写す。赤く示した地層境界の下位(右)は、火山灰や軽石を主体とする凝灰質砂岩(C層)。上位(左)側は、凝灰角礫岩と凝灰質砂岩の互層(D層)である。
↑⑩ C層の凝灰質砂岩は近くで見ると縞模様(ラミナ)が発達している。
↑⑪ C層に見られる偽礫(ハンマーの先が示す箇所)は、C層堆積時に流路途中で下位の半固結の状態の堆積物を削り取って取り込んだもの。flowによる堆積物の証。相対的に軽いので軽石の層準のすぐ下位に入っている。
↑⑫ D層は島の最北部に分布。凝灰角礫岩(黒っぽく見える粗くゴツゴツした部分)と砂岩およびシルト岩(細粒で色が明るい部分)の互層である。層理面の走向傾斜は、N55°E、12~15°N。
↑⑬ D層を近づいてよくみると。細粒部分は層理が発達、細かい粒度変化が見られる砂泥互層。浅海成タービダイトかな?。乱泥流(海底での重力流)が繰り返し起こり堆積したもの。
↑ 簡単なマップと柱状図作ってみた。写真の位置も載せてある。
今回、散歩がてら恵比須島に行ってきた。この時期、気候も懐も寒く、磯遊びという時期でもないので、地層を観察してみた。
↑①
↑② 50mほどの橋を渡ると、島に渡れる。すると真正面にジオパークの看板が立っている。
この看板の説明によると、ここでは2種類の地層が存在する。
・白~灰色の縞模様の美しい砂の層(本ブログのA層、C層、D層の一部)
⇒火山から噴出した軽石や火山灰が海底に降り積もったり、海流に運ばれたりして出来た。
・角張った岩を多く含む地層(本ブログのB層、D層の一部)
⇒海底を流れた土石流。
本ブログ上では勝手ながら便宜上、下位(古い時代)からA~D層の4つに区分した。
A層…ラミナ(縞模様)の発達する凝灰質砂岩および凝灰岩。
B層…安山岩質の火山岩塊を主体とする火山角礫岩。
C層…ラミナ(縞模様)の発達する凝灰質砂岩。層相はA層に似るがより砂質で淘汰が良く、火山礫はほとんど含まない。火山灰の挟みはほとんど見られない。
D層…火山礫凝灰岩と凝灰質の砂岩・シルト岩の互層。
↑③ 島から西方を眺めると遠くに石廊崎~田牛~吉佐美が見える。この眺めはどこかで見た気がする。
↑④ 島の南側には、千畳敷と称される波食台(潮間帯の平坦面)が見られる。(A層)
↑⑤ 千畳敷の平坦面を形成する地層(A層)は火山灰や軽石質の砂礫(砂質凝灰岩)で、火山岩片(数ミリ~2cm以下)は少量含む程度。上部境界近くには細粒の火山灰のラミナが発達。この上位に巨礫主体とする火山角礫岩(B層)が重なる。
↑⑥ 千畳敷の凝灰岩(A層)は、いわゆる石材の伊豆石としての切出しに適した層相で、切出した痕跡が随所に見られる。島内で分布する面積こそ広いが、層厚では4~5m程である。
↑⑦ 若山牧水の歌碑周辺に分布する巨礫主体とする火山角礫岩(B層)は、海底土石流によって堆積したとされる。
↑⑧ B層の礫には水冷破砕が見られる。近接する礫でもある程度のエリアでクラックの方向性が一致する。また、礫間を埋めるマトリクスは少なく、かつ礫と同質の急冷されたガラス質のものであるので。高温の溶岩が海水と接触し急冷されすぐに固結した水冷破砕溶岩に近い感じ?噴出後の流下距離は短いと思う。
↑⑨ 恵比須島西岸側を写す。赤く示した地層境界の下位(右)は、火山灰や軽石を主体とする凝灰質砂岩(C層)。上位(左)側は、凝灰角礫岩と凝灰質砂岩の互層(D層)である。
↑⑩ C層の凝灰質砂岩は近くで見ると縞模様(ラミナ)が発達している。
↑⑪ C層に見られる偽礫(ハンマーの先が示す箇所)は、C層堆積時に流路途中で下位の半固結の状態の堆積物を削り取って取り込んだもの。flowによる堆積物の証。相対的に軽いので軽石の層準のすぐ下位に入っている。
↑⑫ D層は島の最北部に分布。凝灰角礫岩(黒っぽく見える粗くゴツゴツした部分)と砂岩およびシルト岩(細粒で色が明るい部分)の互層である。層理面の走向傾斜は、N55°E、12~15°N。
↑⑬ D層を近づいてよくみると。細粒部分は層理が発達、細かい粒度変化が見られる砂泥互層。浅海成タービダイトかな?。乱泥流(海底での重力流)が繰り返し起こり堆積したもの。
↑ 簡単なマップと柱状図作ってみた。写真の位置も載せてある。
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Posted by さざえさん at 14:52│Comments(2)
│ジオな気分
この記事へのコメント
明けまして、おめでとう ございます
さすが、詳しい解説ですね。
恵比寿島は、少なくとも、三回以上の、火山活動によって、成り立っているようです。
このような、貴重な地層が、観察できる、良い場所です。
ちなみに、この島の伊豆石(伊豆軟石)は、神子元島灯台、建設に利用されています。(前にも、書かせて頂いています)
今年も、よろしくお願いします
さすが、詳しい解説ですね。
恵比寿島は、少なくとも、三回以上の、火山活動によって、成り立っているようです。
このような、貴重な地層が、観察できる、良い場所です。
ちなみに、この島の伊豆石(伊豆軟石)は、神子元島灯台、建設に利用されています。(前にも、書かせて頂いています)
今年も、よろしくお願いします
Posted by 伊東のケンちゃん at 2013年01月08日 17:43
伊東のケンちゃん様
あけましておめでとうございます。
この恵比須島は露出がよく連続的に観察できるのが良いですね。最上位付近(D層)はそのほかの下位の地層に比べ堆積速度が極端に遅そうですね。この層準のイベントもカウントするとかなりの火山活動の回数になりそうです。供給源(海底火山)からの距離(位置)が層相にかなり反映されているような気がします。
今年もよろしくお願いいたします。
あけましておめでとうございます。
この恵比須島は露出がよく連続的に観察できるのが良いですね。最上位付近(D層)はそのほかの下位の地層に比べ堆積速度が極端に遅そうですね。この層準のイベントもカウントするとかなりの火山活動の回数になりそうです。供給源(海底火山)からの距離(位置)が層相にかなり反映されているような気がします。
今年もよろしくお願いいたします。
Posted by さざえ at 2013年01月08日 23:16